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ステライトとステンレスの違いとは?

※画像はイメージです

  1. はじめに(導入)
    • 本記事の目的と読者へのメリット
  2. ステンレスとは
    • 定義・由来
    • 主な成分と種類(オーステナイト系など)
    • 特徴と一般的な用途
  3. ステライトとは
    • 定義・商標としての背景
    • 主な成分と合金の種類(Stellite 6など)
    • 特徴と代表的な用途
  4. ステンレスとステライトの比較
    • 性能比較(耐食性、耐摩耗性、耐熱性など)
    • 加工性・コスト・現場での扱いやすさ
    • 選定時に考慮すべきポイント
  5. 現場での活用事例
    • ステンレスの使用事例
    • ステライトの使用事例
    • 材料選定による改善効果の具体例
  6. 選定のポイントと注意点
    • コスト vs ライフサイクル
    • 加工技術の有無
    • 専門家との連携の重要性
  7. まとめ
    • 両者の違いの整理
    • 適材適所の材料選定のすすめ

はじめに

工業用途の金属材料を選ぶとき、ステンレスとステライトはどちらも耐食性や耐久性に優れた選択肢として広く知られています。その特性や用途の違いについて正確に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。

本記事では、ステンレスとステライトの基本的な特徴から性能比較、実際の活用事例まで詳しく解説します。適切な材料選定は製品寿命の延長やメンテナンスコストの削減につながるため、製造業や設計に携わる方々にとって有益な情報となるでしょう。

ステンレスとは

定義・由来

ステンレス鋼(stainless steel)は、その名の通り「錆びにくい鋼」を意味します。一般的には10.5%以上のクロムを含む鉄合金で、表面に不動態皮膜(酸化クロム層)を形成することで優れた耐食性を発揮します。20世紀初頭にイギリスのハリー・ブレアリーによって発見されて以来、現代社会に欠かせない材料となっています。

主な成分と種類

ステンレス鋼は含有元素や結晶構造により、主に以下の種類に分類されます:

  1. オーステナイト系(300系):クロムとニッケルを主成分とし、非磁性で加工性に優れる。代表的なのは18-8ステンレス(SUS304)で、台所用品や建築材料に広く使用されています。
  2. フェライト系(400系):クロムを主成分とし、磁性を持つ。SUS430などが代表的で、家電製品や自動車部品などに使用されます。
  3. マルテンサイト系:炭素含有量が高く、熱処理により硬化可能。刃物やベアリングなどに使用されます。
  4. 二相ステンレス:オーステナイトとフェライトの二相構造を持ち、高強度と耐食性を兼ね備えています。

特徴と一般的な用途

ステンレスの主な特徴として、優れた耐食性、衛生的で清掃が容易、適度な強度と靭性、美観性の高さなどが挙げられます。これらの特性により、以下のような幅広い分野で活用されています:

  • 厨房機器や食品加工設備
  • 建築の外装材やエレベーター
  • 医療機器や医薬品製造装置
  • 自動車部品(マフラーなど)
  • 化学プラントや配管系統

ステライトとは

定義・商標としての背景

ステライト(Stellite)は「星」を意味するラテン語「stella」に由来する名称で、Kennametal Stellite社の登録商標です。コバルトをベースに、クロム、タングステン、炭素などを含む超硬合金の一種です。20世紀初頭にElwood Haynesによって開発され、極めて高い耐摩耗性と耐熱性で知られています。

主な成分と合金の種類

ステライトはコバルトを主成分(通常45〜65%)とし、クロム(25〜33%)、タングステン(4〜15%)、炭素(0.25〜3.3%)などを含む合金です。用途に応じて様々な種類がありますが、代表的なものには以下があります:

  1. Stellite 6:最も広く使用されるグレードで、バランスの取れた特性を持ち、摺動面や弁座などに使用されます。
  2. Stellite 12:炭素とタングステン含有量が高く、特に優れた耐摩耗性を持ちます。
  3. Stellite 21:モリブデンを含み、耐食性と高温強度のバランスに優れています。
  4. Stellite 1:高温での機械的特性に優れ、航空機エンジン部品などに使用されます。

特徴と代表的な用途

ステライトの主な特徴として、以下が挙げられます:

  • 優れた耐摩耗性(特に摩擦摩耗、エロージョン、キャビテーション摩耗)
  • 高温での卓越した耐酸化性(1000℃以上でも安定)
  • 優れた耐食性(特に硫酸や塩酸などの酸に対して)
  • 高い硬度と機械的強度の維持

これらの特性から、以下のような用途で活用されています:

  • 切削工具や掘削ビット
  • バルブシートやバルブステム
  • ガスタービンのブレード
  • 高温・高圧環境での摺動部品
  • 石油・化学プラントの部品

【ステライト肉盛り溶接技術紹介:高耐久の秘訣】

ステンレスとステライトの比較

性能比較

両者の主要特性を比較すると:

耐食性: ステンレスもステライトも優れた耐食性を持ちますが、環境によって耐性が異なります。酸化環境ではステンレスが優れる場合もありますが、強酸性環境ではステライトの方が優れた耐性を示すことがあります。

耐摩耗性: この点ではステライトが圧倒的に優位です。ステライトはステンレスより数倍から10倍以上の耐摩耗性を持つことがあり、過酷な摩耗環境に適しています。

耐熱性: ステライトは1000℃以上の高温でも強度と硬度を維持できるのに対し、一般的なステンレスは800℃程度から急激に特性が低下します。

硬度: ステライトは通常ロックウェル硬度C40〜60程度で、ステンレス(多くの場合HRC20〜30)より大幅に硬いのが特徴です。

加工性・コスト・現場での扱いやすさ

加工性: ステンレスは溶接、切削、曲げ加工など比較的容易に加工できます。一方、ステライトは非常に硬いため加工が難しく、主に溶射、肉盛り溶接、またはパウダーメタラジー法で製造・適用されます。

コスト: 材料コストではステライトがステンレスよりも大幅に高価です。コバルトやタングステンなどの希少金属を多く含むためで、通常ステンレスの5〜10倍のコストとなります。

扱いやすさ: 現場での扱いやすさではステンレスが優位です。ステンレスは広く普及しており、多くの技術者が加工技術を持っていますが、ステライトは専門的な技術や設備が必要となります。

選定時に考慮すべきポイント

材料選定時には以下のポイントを考慮すべきです:

  • 使用環境の条件(温度、腐食性物質の有無、摩耗リスクなど)
  • 期待される使用寿命
  • 初期コストとメンテナンスコストのバランス
  • 加工技術や設備の利用可能性
  • 部品の重量や設計上の制約

現場での活用事例

ステンレスの使用事例

食品加工装置: 食品業界では衛生面から広くステンレスが使用されています。SUS304やSUS316Lなどは洗浄剤への耐性と衛生的な表面維持が可能なため、タンク、配管、作業台など多くの設備に採用されています。

建築外装材: 現代建築では、耐候性と美観からステンレスパネルが多用されています。例えば東京スカイツリーの外装には特殊なステンレス鋼が使用され、数十年にわたる美観維持が期待されています。

医療機器: 外科手術器具や医療用インプラントには、SUS316LやSUS630などの高純度ステンレスが使用されています。人体との生体適合性と滅菌処理への耐性が求められるためです。

ステライトの使用事例

発電プラントのバルブ: 高温・高圧の蒸気環境で使用されるバルブシートには、耐摩耗性と耐熱性に優れたStellite 6が広く使用されています。この適用により、メンテナンス頻度が大幅に削減され、プラント稼働率の向上に貢献しています。

石油掘削ビット: 岩盤を掘削する際の先端ビットには、極めて高い摩耗環境に耐えるためステライトが使用されます。従来の硬化鋼と比較して数倍の寿命を実現しています。

航空機エンジン部品: ジェットエンジンのタービンブレードの接触部などには、高温での強度維持と摩耗抵抗が求められるため、特殊なステライト合金が使用されています。

材料選定による改善効果の具体例

ある化学プラントでは、強酸性液体を扱うポンプ部品にSUS316ステンレスを使用していましたが、6ヶ月程度で摩耗によるリークが発生していました。ステライト21による表面処理を施した結果、部品寿命が3年以上に延長され、メンテナンスコストと生産ロスが大幅に削減されました。

また、製紙工場のスクレーパーブレードでは、従来のステンレス製ブレードからステライトを溶射したブレードに変更したことで、交換頻度が1/4に減少し、年間の設備停止時間が70%削減された事例があります。

選定のポイントと注意点

コスト vs ライフサイクル

初期コストだけを見るとステンレスが優位ですが、ライフサイクルコストで考える必要があります。摩耗や腐食による頻繁な部品交換が必要な環境では、高価なステライトでも長期的には経済的である場合が多いのです。

例えば、ある鉱山のスラリーポンプでは、ステンレス部品の4倍のコストのステライト部品が10倍の寿命を示し、結果として総コストが60%削減された例があります。

加工技術の有無

ステライトは特殊な加工技術を要するため、社内に技術がない場合は外注コストや納期も考慮する必要があります。また溶射や肉盛り溶接の品質管理も重要で、不適切な施工は早期剥離などの問題を引き起こします。

専門家との連携の重要性

複雑な環境での材料選定には、腐食や摩耗のメカニズムを理解した専門家の意見が不可欠です。特にステライトの種類選定とその適用方法については、材料メーカーやコンサルタントとの連携が推奨されます。

まとめ

ステンレスとステライトは、どちらも優れた耐食性を持つ金属材料ですが、その本質と用途は大きく異なります。

ステンレスは鉄をベースとした合金で、比較的低コストで加工性に優れ、一般的な耐食環境での使用に適しています。一方、ステライトはコバルトをベースとした超硬合金で、極めて優れた耐摩耗性と耐熱性を持ちますが、コストが高く特殊な加工技術を要します。

材料選定にあたっては、使用環境の条件を正確に把握し、初期コストだけでなくライフサイクルコストも考慮することが重要です。適材適所の選定により、設備の信頼性向上とコスト削減を同時に実現することができるでしょう。

厳しい摩耗環境や高温環境では圧倒的にステライトが有利ですが、一般的な環境やコスト制約がある場合にはステンレスが合理的な選択となります。両者の特性を正しく理解し、最適な材料選定に活かしていただければ幸いです。

参考用語解説

不動態皮膜:金属表面に形成される薄い酸化膜で、内部の金属を保護する役割を持つ。

溶射:金属を溶かして微粒子状にし、高速で基材表面に吹き付ける表面処理技術。

肉盛り溶接:基材表面に溶接材料を溶着させて層を形成する表面強化法。

パウダーメタラジー:金属粉末を成形・焼結して製品を作る技術。

エロージョン:流体中の固体粒子による表面摩耗現象。

キャビテーション:液体中の気泡生成・崩壊による表面損傷。

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