SPECIALTY ALLOYS
取り扱い特殊合金

銅ベース(銅合金)

高い加工性と耐久性、美観性を兼ね備えた銅ベース合金

銅合金とは、銅(Cu)を主成分とし、他の金属元素を添加することで特性を向上させた金属材料です。代表的なものには、錫を加えた青銅(ブロンズ)、亜鉛を加えた黄銅(真鍮)、アルミニウムを加えたアルミブロンズ、ニッケルを加えた白銅などがあります。
それぞれの用途に応じて最適化されており、例えば黄銅は機械的強度と加工性のバランスが良く、青銅は耐摩耗性や耐腐食性に優れ、アルミブロンズは高強度と耐海水性から船舶部品などに適しています。銅合金は古くから人類に利用されてきた素材であり、現代においても多彩な特性と応用範囲の広さから、産業に不可欠な金属材料です。

黄銅(おうどう)

優れた耐久性と信頼性を誇る、銅ベースの合金

黄銅(おうどう)とは?

黄銅(おうどう)は、青銅と並ぶ代表的な銅合金の一種で、先史時代から人類に使用されてきた長い歴史を持ちます。銅(Cu)を約60~70%、亜鉛(Zn)を約30~40%含む合金であり、「真鍮(しんちゅう)」の名でも広く知られています。
美しい黄金色の光沢と高い加工性を備えており、楽器や装飾品、仏具などの美術工芸品から、ラジエーターやネジ、建築部材といった工業用途に至るまで、その用途は多岐にわたります。展延性が高く、冷間加工にも優れるため、複雑な形状への対応も容易です。
中でも、井田熔接が得意とするのは「六四黄銅(四六黄銅)」と呼ばれる合金で、銅約60%、亜鉛約40%の組成比を持ちます。この合金は、見た目が美しいだけでなく、成形性・導電性・切削加工性に優れ、実用性と美観を兼ね備えた汎用性の高い材料として、現代のあらゆる分野で使用されています。

黄銅(おうどう)

黄銅の種類

品種 該当規格 用途
六四黄銅相当材 JIS規格/ BCu-6
AWS規格/ RBCuZn-C
特殊黄銅線を使用した肉盛溶接用のフラックス付ガス溶接棒で、強度と耐摩耗性および海水に対する耐食性に優れています。
溶接作業時の亜鉛の蒸発が極めて少なく、ブローホールなど欠陥のない強力な溶接部が得られます。

黄銅化学成分

品種 Cu Sn Fe Ni Pb Mn Si Zn
六四黄銅相当材 59.0〜61.0 0.80~1.30 ≦0.02 ≦0.02 ≦0.01 ≦0.02 0.07〜0.15
黄銅(六四黄銅)
黄銅(六四黄銅)

六四黄銅(C2600など)は成形性と導電性に優れ、
切削加工性も良好。一般的な黄銅の中でも最も広く使われる。

黄銅化学成分

品種 引張強さ(MPa) 伸び(%) 硬さ(HB)
六四黄銅相当材 488 43 105〜115

主要な用途

「耐摩耗×耐食×加工性」が求められる機械・船舶・産業機器などの
重要な構成部品に用いられ、優れたパフォーマンスを発揮します。

  • ■ 油圧ピストン

    • ピストンリングやシール接触部に摺動部の耐摩耗性と潤滑性を確保。新作段階で設計的に肉盛部を設けることで、母材(炭素鋼やステンレス)との複合構造とし、軽量化と性能向上の両立が可能。また、肉盛後の精密研削により、シール性や油圧保持力が最適化されます。
  • ■ シャフト(回転軸)

    • 回転部のキー溝周辺や軸受け接触部などに、耐摩耗性や寸法補正を目的として。母材に対して意図的に肉盛を設ける設計とし、後工程で寸法仕上げをすることで、高精度かつコスト効率の高い製品づくりが可能。特に、水潤滑や低摩擦が求められる環境下で有利。
  • ■ ギヤー(歯車)

    • 異種金属との摩耗対策や焼付き防止。特に、駆動時のノイズ低減や柔軟な噛み合わせが求められる精密装置や装飾機構において、新作時の選定技術として利用。
  • ■ 船舶用スクリュー(プロペラ)

    • 海水中での耐食性と衝撃への耐性を両立。新作時においては、キャスト母材(鋳物)に対してリーディングエッジや端部の耐久性を確保。特に砂巻きやキャビテーションの影響を受ける部位に対して有効。
  • ■ ポンプ部品(インペラ・ケーシング)

    • ケーシングやインペラのリム部・シール部・摺動部において、耐摩耗性・耐腐食性の向上。水・油・薬液用ポンプの長寿命化と信頼性向上に貢献。鋳造では再現困難な微細なエッジ部も肉盛と研磨で再現可能。

黄銅豆知識

  1. 1.由来

    漢字の「真鍮」は中国語で「真の金属(鍮)」という意味を持ち、かつては金に似た光沢を持つことから「偽金(ぎきん)」とも呼ばれていました。西洋では「Brass(ブラス)」と呼ばれ、金管楽器の語源にもなっています。

  2. 2.古代ローマ時代から使われていた合金

    黄銅は紀元前のローマ時代にはすでに使用されており、当時は「カラミス(orichalcum)」と呼ばれ、装飾品や貨幣にも利用されていました。製法は長く秘伝とされていました。

黄銅イメージ1 黄銅イメージ2 黄銅イメージ3
施工実績へ

アルミブロンズ

高強度、高耐食性、耐摩耗性、耐海水性に優れた合金

アルミブロンズ(アルミニウム青銅)とは?

アルミブロンズ(アルミニウム青銅)は、銅にアルミニウムを主成分として添加した合金で、一般に5~11%程度のアルミニウムを含みます。
強度・耐摩耗性・耐食性に優れ、特に海水や化学薬品に対して高い耐久性を発揮します。
そのため、船舶のスクリューやポンプ部品、バルブ、軸受など過酷な環境下で使用される機械部品に広く利用されています。
また、美しい黄金色をしており、美術工芸品にも用いられることがあります。
高性能かつ多用途な工業用合金として重宝されています。

アルミブロンズ

アルミブロンズ種類

品種 該当規格 用途
アルミブロンズ JIS規格/ Z3341 YCuAl
AWS規格/ A5.7 ERCuAL-A2
アルミニウム青銅、アルミニウム黄銅、マンガン黄銅などの肉盛溶接、摺動摩耗部の肉盛溶接。

アルミブロンズ化学成分

品種 Cu Si Pb Al Fe Zn
アルミブロンズ ≦0.10 ≦0.02 8.5〜11.0 ≦1.5 ≦0.02

アルミブロンズ物理的性質

品種 引張強さ(MPa) 伸び(%) 硬さ(HRB) 比重 融点
アルミブロンズ 約570 37 約130 約7.4 約1020~1050℃

主要な用途

「耐食性×耐摩耗性×靭性」に優れ、過酷な使用環境においても信頼性が高く、
様々な産業分野で重要な構成部品として採用されています。

  • ■ 軸受け

    • 優れた耐摩耗性と高荷重下での滑り特性を持ち、潤滑が不十分な条件でも長寿命を発揮。耐食性にも優れるため、粉塵や湿気の多い過酷な環境でも信頼性の高い軸受材として使用。
  • ■ 船舶部品

    • 海水に対して極めて高い耐食性を持つため、スクリュー、舵部品、海水配管継手などに多用されます。腐食や電食に強く、メンテナンス性も良好で、長期運用が求められる海洋環境に最適。
  • ■ ポンプ部品

    • 耐キャビテーション性と防食性に優れている為、インペラやケーシングなど、流体が直接接触するポンプ部位に使用海水や化学液体を扱う産業用ポンプに多く採用。
  • ■ 油圧機器や建設機械の荷重部品

    • 高強度と耐衝撃性を併せ持つ為、重機構造部品に使用されます。高温環境でも機械的性質が維持されるため、過酷な使用条件下でも安定した性能を発揮。
  • ■ 耐摩耗部品

    • すり減りに強く、摩擦による損傷を抑えられるため、摺動部や摩擦接触が多い部品に最適。表面硬度も高く、異物の噛み込みや粒子摩耗にも強いため、鉱業や製紙機械の部品としても使用。

アルミブロンズ豆知識

  1. 1.別名?

    アルミニウム青銅は海水ポンプや船舶プロペラに用いられるほど耐海水性が高く、「赤金」とも呼ばれることがあります。

  2. 2.海で活躍?

    生物付着を防ぐ抗菌性(バイオスタティック性)があるため、海洋生物の付着防止に利用されます。

施工実績へ