SPECIALTY ALLOYS
取り扱い特殊合金

ニッケルベース

性能バランスの幅広さと信頼性の高さが特徴のニッケルベース合金

ニッケルベース合金は、高温環境や腐食性の強い条件下でも安定した性能を発揮する補修用特殊合金です。
ニッケルベース合金の特長は、性能バランスの幅広さと信頼性の高さにあります。井田熔接では、それぞれの素材特性と母材条件を見極めたうえで、最適な肉盛補修材をご提案・施工いたします。

コルモノイ合金

優れた耐久性と信頼性を誇る、ニッケルベースのハードフェース用合金

コルモノイとは?

コルモノイ(Colmonoy®)は、優れた耐久性と信頼性を誇る、ニッケルベースのハードフェース用合金。
Ni-Cr(ニッケル-クロム)系の合金に、ボロンやシリコンを加えることで形成されるホウ化物や炭化物を微細に分散させ、極めて高い耐摩耗性を実現したハードフェース用合金です。
この構造により、耐食性・耐熱性・耐酸性にも優れており、高温下や腐食環境においても安定した性能を発揮します。
特に、摺動部・回転部・高負荷部位の補修において、耐久性と精度を求められる現場での使用実績が多く、長年にわたり信頼されてきた素材です。
コルモノイ(Colmonoy®)はWall Colmonoy Ltd.の保有する登録商標です。

コルモノイ合金

コルモノイ種類

品種 製品の種類 用途
コルモノイNo.6 ガス溶接棒 コルモノイ合金中広範囲に使用される。研削仕上げ、原子力用バルブ、ポンプ。
コルモノイNo.56 ガス溶接棒 No.5とNo.6の中間硬度で熱間に用いる。押し出し機など。
コルモノイNo.5 ガス溶接棒 耐衝撃を考慮に入れている。仕上げは超硬バイト。
コルモノイNo.4 ガス溶接棒 No.5よりさらに耐衝撃力に富み、ポンプ部品、ガラス瓶のプランジャーに良好。
コルモノイNo.21 TIG溶接棒 ガラス金型、鋳物部品の修理用。ヤスリ仕上げ。

コルモノイ化学成分

品種 Cr Fe Si B C Ni
コルモノイNo.6 13.5 4.75 4.25 3 0.75 Bal
コルモノイNo.56 12.5 4.5 4 2.75 0.7 Bal
コルモノイNo.5 11.5 4.25 3.75 2.5 0.65 Bal
コルモノイNo.4 10 2.5 2.25 2 0.45 Bal
コルモノイNo.21 5 3.5 3 1 0.25 Bal

コルモノイ物理的性質

品種 比重 融点(℃) 膨張係数温室
(〜700℃in/in)
硬さ HRC
コルモノイNo.6 7.8 1040 8.14×10⁻⁶ 56~61
コルモノイNo.56 7.95 1050 50~55
コルモノイNo.5 8.14 1065 8.41×10⁻⁶ 45~50
コルモノイNo.4 8.22 1105 8.56×10⁻⁶ 35~40
コルモノイNo.21 8.34 1220 8.66×10⁻⁶ 18~23

主要な用途

コルモノイは「耐熱×耐食×耐摩耗」の特徴があり、金属間化合物により硬度を得ます。
ガラス金型やゴム生成スクリューなどを対象とした環境に適した自溶性合金。

  • ■ ガラス金型

    • 高温で粘性のあるガラスが金型と直接接触する耐熱・耐摩耗性
    • ガラスの成分(例:ソーダ、鉛、ホウ素など)からの耐食性
  • ■ スクリュー・シャフト部

    • 摩耗と腐食が同時に進行する環境での軸受部・ねじ部の強化
    • スラリー流体・化学薬品にさらされる撹拌軸や回転機構部
  • ■ バルブ・シート部・シール面

    • 高温・高圧下で繰り返し開閉されるバルブ接触面の耐摩耗
    • 気密性・寸法精度が求められるシール面や摺動部
  • ■ ポンプ部品(ケーシング・羽根車など)

    • 摩耗と腐食が激しい流体機器
    • 化学プラントや排水処理設備など、液体・気体の流路部品
  • ■ 成形・圧延ロール

    • 高硬度と高温安定性を活かした連続使用される金属加工設備部品

コルモノイ豆知識

  1. 1.由来

    1937年にノーマン・コール氏とウォルター・エドモンズ氏によってニッケル基ハードフェイシング合金として開発されました。その名称も、Cole(コール)、Edmonds(エドモンズ)、「alloy(合金)」の頭から「Col-mon-oy」と名付けられたものです。

  2. 2.世界初!?

    1938年にWall Colmonoy社により世界初のニッケルベース硬質被覆合金として製品化。下穴掘削ビットやポンプ部材などに広く使われています。

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ハステロイ合金

極限の腐食環境にも耐える、ニッケルベースの高耐食合金

ハステロイとは?

ハステロイ(HASTELLOY)ニッケルを主成分に、クロム・モリブデンなどを加えることで、耐食性と耐摩耗性を飛躍的に高めたニッケル基合金です。
特に、液体に対する塩素系化合物・強酸・海水・有機酸・無機酸・高塩分環境といった、一般的な金属では劣化や腐食が急速に進行する環境においても、ハステロイは安定した性能を発揮します。
この合金は、全面腐食はもちろん、孔食・すきま腐食・応力腐食割れといった局所的な腐食現象にも非常に強く、化学プラント、排煙脱硫装置、排水処理設備、海洋構造物などの高腐食リスクを抱える部品の補修・保護に最適です。
また、耐摩耗性にも優れているため、腐食だけでなく摩擦や衝撃を受ける箇所でも使用可能であり、“腐食+摩耗”という複合的な環境下での使用に強い素材として高く評価されています。
ハステロイ(HASTELLOY)はHaynes International, Incの商標です。

ハステロイ合金

ハステロイ種類

品種 該当規格 用途
ハステロイC-22 JIS/ SNi6022
AWS/ ERNiCrMo-10
ハステロイC22に相当するTIG溶接棒で、酸化性および還元性の両方の環境で優れた耐食性を示し、溶接のままの状態でも耐孔食性や耐すきま腐食性、耐応力腐食性が良好です。
ハステロイC-276 JIS/ SNi6022
AWS/ ERNiCrMo-10
ハステロイC276に相当するTIG用溶接棒で、酸化性と還元性の両雰囲気での耐食性に強く、また耐ワレ性や機械的特質、高温強度および耐熱、耐酸化性に優れています。

ハステロイ化学成分

品種 Cu Si Mn Ni Cr Mo Fe W V
ハステロイC-22 ≦0.015 ≦0.08 ≦0.50 Bal. 20.0〜22.5 12.5〜14.5 2.0〜6.0 2.5〜3.5 -3.0〜4.5
ハステロイC-276 ≦0.010 ≦0.08 ≦1.00 Bal. 14.5〜16.5 15.0〜17.0 4.0〜7.0 3.0〜4.5 ≦0.35

ハステロイ物理的性質

品種 引張強さ(MPa) 0.2%耐力(MPa) 伸び(%) 硬さ(HRB)
ハステロイC-22 781 525 47 85〜92
ハステロイC-276 765 400 38 88〜95

主要な用途

ハステロイは
「腐食に最も強い合金を選びたい」
というニーズに応えます。
最後の砦として選ばれる存在。

  • ■ 化学プラント・薬品設備部品

    • 強酸・塩素・有機溶剤を扱うタンク、リアクター、配管
    • 腐食性液体が循環・滞留するパイプ・フランジ・継手など
  • ■ 排ガス・排水処理設備

    • 排煙脱硫装置(FGD)など、硫酸ミストや塩化物による腐食リスクが高い部位
    • 下水処理・産業排水設備のスラッジライン、曝気タンク構造部
  • ■ 海水利用・海洋設備部品

    • 海水を扱うポンプケーシング、熱交換器、バルブ、シャフトなど
    • 潮風・飛沫がかかる海岸施設・船舶機器・港湾インフラの金属部
  • ■ 食品・製薬・バイオ分野の高清浄装置

    • 塩分・酸性成分・洗浄薬品への高耐性を必要とする調整槽やミキサー部品
    • 高温スチーム洗浄などの繰り返し処理が必要な環境
  • ■ 高温・高圧環境下の構造材

    • 応力腐食割れ(SCC)に強いため、温度+荷重がかかる部品にも使用可能

ハステロイ豆知識

  1. 1.唯一無二!?

    ハステロイC-22は濃硝酸+塩化物などの混酸条件下で唯一耐えられる合金として有名です。

  2. 2.ステンレスでも不可能な場所で?

    ハステロイC-276は、強塩酸・熱リン酸・硫化水素・湿塩素・次亜塩素酸など、非常に攻撃性の高い薬液環境でも腐食しません。

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インコネル合金

高温・高圧環境でも性能を維持する、耐熱・耐食性に優れたニッケル合金

インコネルとは?

インコネル(Inconel®)は、ニッケルを主成分に、クロム・モリブデン・鉄・炭素などを含む耐熱・耐食性に優れた特殊合金です。ニッケルの含有量が高いため、高温下での酸化や腐食に非常に強く、特に応力腐食割れに対する耐性が高いのが特長です。また、アルカリ環境における耐食性にも優れており、熱・圧力・化学薬品などが複合的に作用する過酷な条件下でも安定した性能を発揮します。
そのため、発電設備・化学プラント・熱交換器・排気システムなどの気体に対する高温構造部材への使用に適しており、信頼性の高い補修・肉盛材として広く用いられています。
インコネル(Inconel®)はINCO社(現Special Metals)が開発した登録商標です。

インコネル合金

インコネル種類

品種 該当規格 用途
インコネル625 JIS/SNi6625
AWS/ERNiCrMo-3
インコネル625に相当するTIG用溶接棒で、耐ワレ性が良好で、
機械的性質や高温強度および耐熱、耐食、耐酸化性に優れています。
インコネル625
インコネル625

インコネル化学成分

品種 Cu Si Mn Ni Cr Mo Fe Al Ti Al
インコネル625 ≦0.10 ≦0.50 ≦0.50 ≦58.0 20.0~23 8.0~10.0 ≦5.0 ≦4.0 ≦0.40 3.15~4.15

インコネル物理的性質

品種 引張強さ(MPa) 0.2%耐力(MPa) 伸び(%)
インコネル625 718 440 45

主要な用途

インコネルは、「高温・高応力・強酸性・アルカリ性」という複合的な過酷環境においても、
長期にわたって形状と性能を維持できる、信頼性の高い合金です。

  • ■ 発電・熱エネルギー関連設備

    • ガスタービンブレード、ボイラー部品、熱交換器チューブなど、高温・高圧・酸化環境下での構造部材
    • 燃焼ガスが流れる排気ラインや高温流体配管の補強
  • ■ 化学プラント・反応器

    • 苛性ソーダ(NaOH)などのアルカリ薬品環境で劣化しにくく、応力腐食割れを防止するためのリアクター内部や接液部
  • ■ 石油・ガス関連装置

    • ダウンホールツールや掘削部品の高温・腐食環境下での補強
    • 酸性ガス(H₂Sなど)や海水との接触があるバルブ、継手、パイプ
  • ■ 自動車・産業機械

    • 排気マニホールド、ターボチャージャー部品、エキゾースト系統における熱疲労対策・耐酸化

インコネル豆知識

  1. 1.化学プラントの最後の切り札?

    酸・塩・酸化剤が混ざった腐食性液体が流れる配管や熱交換器の「最終手段」として選ばれるのがインコネル625です。

  2. 2.海の上の仕事人?

    「波しぶきがかかるが乾く時間もある」という過酷な「飛沫帯」では、ステンレス鋼が錆びる中でも無傷なのが625のすごさです。

  3. 3.宇宙産業でも活躍中?

    NASAのスペースシャトルのスラスタ部品、燃焼室のガスライン、耐熱断熱材などに使用されてきました。

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